【脱・初心者!Git入門】第1回:まだ「ファイル名_最終.txt」で消耗してるの? マイクラとAIで理解する「Git」の正体

プログラミングを始めると、必ず立ちはだかる最初の壁。それが「Git(ギット)」と「GitHub(ギットハブ)」です。

「名前が似ててややこしい!」 「黒い画面が怖い!」 「ChatGPTにコード書いてもらうから、別に覚えなくてよくない?」

そう思って、ここで挫折する人が山ほどいます。でも、安心してください。あなたが挫折するのは、あなたのせいではなく、説明が難しすぎるからです。

この連載(全3回)では、専門用語を極限まで排除し、「絶対に脱落させない」ことを約束して解説します。

この記事の歩き方

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この連載では、第2回までは読み物として楽しめる内容で、第3回で初めてパソコンを使います。

「布団の中で、ふーんそうなんだ」と読むだけでも理解できるように書いています。

無理に手を動かそうとしなくて大丈夫。まずはリラックスして、読み物として楽しんでください。


1. 私たちが抱える「ファイル管理の地獄」

Gitの凄さを知る前に、まず「Gitがない世界」の絶望を思い出してください。

あなたは学校のレポートや仕事の資料を作るとき、こんな保存の仕方をしていませんか?

“` フォルダ「大事なレポート」 ├── レポート_最終.docx ├── レポート_最終_修正版.docx ├── レポート_本当に最終.docx ├── レポート_提出用_印刷_v2.docx └── レポート_最新_20251120.docx “`

これが「Gitがない世界(地獄)」です。

この管理方法には、致命的な弱点があります。

  • どれが正解かわからない: 1ヶ月後の自分が見たら、どれが最新か絶対に分かりません。
  • 過去に戻れない: 「やっぱり『修正版』の時の文章に戻したい!」と思っても、上書き保存していたらもう手遅れです。
  • 共同作業が無理: 友達とファイルをメールで送り合っていると、「誰の修正が最新?」と必ずカオスになります。

この「あるある」な悩みを、魔法のように解決してくれる道具。それが Git です。


2. 決定的な違いを「マイクラ」で理解する

GitとGitHubの違いを、ゲームのMinecraft(マイクラ)で例えてみましょう。

※これはあくまで理解を助けるための例え話です。実際のマイクラで使える機能ではありません。

Git(ギット)=「チート級のセーブ機能」

あなたは今、自分のパソコンの中で、ひとりで巨大な「天空の城」を作っています。

【普通のマイクラ(Gitなし)】

「仕上げに城壁をTNT(爆弾)で装飾しよう……あ、ミスった!」

カチッ……ドカーン!!!

一瞬の操作ミスで、数週間かけて作った城が半分吹き飛びました。オートセーブ機能のせいで、壊れた状態で保存されてしまいます。

絶望です。 もう泣きながら作り直すしかありません。

【Gitがあるマイクラ】

もしGitを使っていたら、TNTを置く前に「コミット(記録)」という魔法を使えます。これはRPGのセーブポイントのようなものです。

  • あなた: 「Git!『TNTを置く前の状態』に戻して!」
  • Git: 「御意。(シュンッ)」
  • 画面: 爆発する前の、綺麗な城が元通り。

これがGitです。

あなたのパソコン(ローカル)内で動き、「いつでも、どんな過去の状態にも、一瞬で時間を巻き戻せる」。

これがあれば、どんな大胆な失敗も怖くありません。

【さらに凄い機能:ブランチ(平行世界)】

Gitには「ブランチ」という必殺技があります。

「城の周りにマグマの海を作りたい。でも失敗して城が燃えたら嫌だな…」

そんな時、Gitなら「城のコピー世界(パラレルワールド)」を一瞬で作れます。

そのコピー世界で思う存分マグマを流し、失敗したらその世界を消すだけ。成功したら、元の世界と合体させればいいのです。

GitHub(ギットハブ)=「マルチプレイ用サーバー」

では、GitHubは何でしょうか。

Gitが「あなたのパソコン内」の話なら、GitHubは「インターネット上の広場」です。

あなたがGitで作った「天空の城」のデータを、GitHubという共有サーバーにアップロードします。すると何が起きるでしょうか?

  • バックアップになる

PCが壊れても、GitHubに城のデータがあるので安心。新しいPCですぐ再開できます。

  • みんなで建築(マルチプレイ)ができる

遠くに住む友達を招待できます。「俺が外壁を作るから、お前は回路を組んでくれ」と、同時に作業して最後に合体できます。


3. なぜ今、AI時代にGitが必要なのか?(リターンはあるの?)

最近は、ChatGPTやClaudeなどのAIがコードを書いてくれるようになりました。

「AIが書いてくれるなら、人間がGitなんて覚える必要なくない?」と思うかもしれません。

断言します。AIを使うなら、むしろGitは必須です。

なぜなら、「AIは、爆速でコードを書くけど、爆速で破壊もする」からです。

よくある事故

  • あなた「この機能を追加して!」
  • AI「はい!書き換えました!」
  • あなた「よし動いた!…あれ? さっきまで動いていた別の機能が動かなくなってる!?」

AIは「文脈」を忘れたり、勝手に重要なコードを消したりすることがよくあります。

もしGitがなかったら、「どこを消されたの?!」と数千行のコードを目視で探すことになります(地獄です)。

Gitがあれば、「AIがいじる前の状態」にコマンド一発で戻せます。

AIという「暴走しがちな超強力な相棒」の手綱を握るための命綱、それがGitなのです。


4. つまり、こういうこと!

ここまでの話を整理しましょう。この表だけ覚えて帰ってください。

| 特徴 | Git (ギット) | GitHub (ギットハブ) | |:—|:—|:—| | 場所 | あなたのパソコンの中(ローカル) | インターネットの上(リモート) | | 役割 | タイムマシン:変更履歴を記録し、過去に戻れるようにする。 | 巨大倉庫 / 広場:記録を保管したり、他人と共有したりする。 | | マイクラなら | 「セーブデータを管理するMOD」(パラレルワールドも作れる) | 「みんなで遊ぶためのサーバー」 | | AI開発なら | AIがバグらせた時に「正常だった時」に戻すスイッチ | チーム開発や、自分のコードを世界に見せるポートフォリオ | | 関係性 | まずこれがないと始まらない | Gitのデータを預ける場所 |


5. 今後の連載ロードマップ

「概念はわかったけど、難しそう…」

大丈夫です。この連載では、いきなり全部をやろうとしません。

初心者が一番つまずくのは、「自分のPCでの操作(Git)」と「ネット上の操作(GitHub)」を同時に覚えようとしてパニックになるからです。だから分けます。

  • 【第1回】概念編(イマココ)

GitとGitHubの違い、そしてAI時代の重要性を理解しました。

  • 【第2回】仕組み編/地図編

PCなしでも読めます!「4つのエリア」と「3つのコマンド」で、Gitの全体像(地図)を理解します。 一眼レフカメラの例えで、add と commit の違いを直感的に理解できます。

  • 【第3回】実践編

いよいよ実際にコマンドを打ちます!第2回で手に入れた地図を片手に、実際にファイルを作り、破壊し、そして復活させる感動を味わいます。 GitHubへのプッシュや、「パラレルワールド(ブランチ)」の作り方も解説。


次回の予告

次回は、「Gitの地図」を手に入れます。

PCを開かなくても、スマホで寝転がりながら読むだけで、「4つのエリア」「3つのコマンド」というGitの全体像が理解できます。

一眼レフカメラの例えで、`git add` と `git commit` の違いが直感的にわかるようになります。

地図さえあれば、実践編(第3回)での迷子はありません。次回、お会いしましょう!


この記事は「脱・初心者!Git入門」シリーズの第1回です。

  • 第1回:まだ「ファイル名_最終.txt」で消耗してるの? マイクラとAIで理解する「Git」の正体(本記事)
  • [第2回:PCなしでも分かる!世界一わかりやすい「Gitの地図」と「知ったかぶり用語集」](./git-tutorial-part-2.md)
  • [第3回:さあ、過去を支配しよう。黒い画面で刻む「最初の歴史」](./git-tutorial-part-3.md)

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