【脱・初心者!Git入門】最終回:さあ、過去を支配しよう。黒い画面で刻む「最初の歴史」
ついに最終回です。これまでのあらすじを確認しましょう。
- 第1回(概念): Gitは「タイムマシン」、GitHubは「共有倉庫」。
- 第2回(地図): データの流れは「スタジオ(作業)➡ フレーム(Add)➡ アルバム(Commit)」。
この知識があれば、もう「黒い画面」は怖くありません。
なぜなら、あなたが打つコマンドは、第2回で学んだ「地図」の上を移動するための指示に過ぎないからです。
さあ、あなたのパソコンに「タイムマシン機能」をインストールして、最初の歴史を刻みましょう。
STEP 1:タイムマシンの「エンジン」を積む(インストール)
まずは、パソコンにGitというソフトを入れないと始まりません。
ここが一番の難所ですが、図の通りやれば大丈夫です。
Windowsの方
1. 公式サイトからダウンロード: [Git for Windows (gitforwindows.org)](https://gitforwindows.org) にアクセスし、「Download」ボタンをクリックします。
2. インストーラーを起動: ダウンロードされたファイルをダブルクリックします。
3. 設定はデフォルトのままで進める: ここが重要です。英語の画面が大量に出てきて、色々な選択肢(エディタはどうする?パスはどうする?)を聞かれます。
初心者は全て「デフォルト(そのまま)」でOKです。
設定を変えずに、ひたすら「Next」を押し続け、最後に「Install」を押してください。
※ここで設定をカスタマイズすると、後でトラブルの原因になることがあります。
4. 確認: インストール完了後、Windowsのスタートメニューに「Git Bash(ギット・バッシュ)」というアプリが増えていれば成功です!
Macの方
1. ターミナルを開く: Command + Spaceキーを押して、「ターミナル」と入力して開きます。
2. 確認コマンドを打つ: 以下の文字をコピーして貼り付け、エンターキーを押してください。
“`bash git –version “`
3. 結果を確認:
- `git version 2.xx…` と数字が出た場合:既にインストールされています。作業不要です。
- 「”git”コマンドを実行するには…インストールする必要があります」というポップアップが出た場合:「インストール」をクリックしてください。Macが自動でインストールしてくれます。
STEP 2:パイロット登録(初期設定)
タイムマシン(Git)は動くようになりましたが、まだ「誰が操縦しているか」を知りません。
歴史に名前を残すために、あなたの名前を登録します。
インストールした「Git Bash(Windows)」または「ターミナル(Mac)」を開き、以下の2行を1行ずつ実行してください。
“`bash
1. 名前を登録(ローマ字推奨)
git config –global user.name “Taro Yamada”
2. メアドを登録(GitHubを使う予定のアドレス)
git config –global user.email “taro@example.com” “`
安心ポイント:
エンターキーを押しても、画面には何も表示されません(無言)。
エラーが出なければ「成功」している証拠です。Gitは無口な職人なんです。
STEP 3:聖域の作成 `git init`
ここからが本番です。
第1回・第2回では「フォルダをGit管理下にする」と言いましたが、これを「タイムマシンのコックピットを作る」と考えてください。
1. フォルダを作る: デスクトップに新しいフォルダ `my_project` を作ってください。
2. ターミナルでフォルダに移動する: ここが初心者の最初の関門ですが、簡単な方法があります。
- Windowsの場合: 作ったフォルダを右クリックして、「Open Git Bash here」を選択。これだけで移動完了です。
- Macの場合: ターミナルに `cd ` (cdとスペース)と打ち、その後にフォルダをドラッグ&ドロップしてエンター。
3. スイッチオン: 以下のコマンドを打ちます。
“`bash git init “`
画面に `Initialized empty Git repository…` と出ましたか?
おめでとうございます。このフォルダはもう普通のフォルダではありません。
「過去に戻れる聖域(リポジトリ)」へと進化しました。
STEP 4:歴史を刻む `add` と `commit`
では、第2回で学んだ「2段階保存」を実践します。
「フレームに入れて(add)、シャッターを切る(commit)」でしたね。
1. ファイルを作る(作業)
フォルダの中に、メモ帳で `story.txt` を作り、「昔々、あるところに」と書いて保存してください。
2. フレームに入れる(add)
黒い画面でこう打ちます。
“`bash git add . “`
(最後の「`.`」は「ここにあるファイル全部」という意味です)
これで、ファイルが「ステージング(撮影台)」に乗りました。
3. 歴史に刻む(commit)
シャッターを切ります。
“`bash git commit -m “物語の始まり” “`
`1 file changed` と出れば成功!
これで、「物語の始まり」という時点のセーブデータが確定しました。
STEP 5:【奇跡】崩壊した世界を救う `restore`
ここがGitのクライマックスです。
「AIにコードを書かせたらバグった」「大事な文章を消してしまった」
そんな絶望的な状況を再現し、そこから生還します。
1. わざと破壊する
さっきの `story.txt` を開き、中身をめちゃくちゃに書き換えてください。
「昔々、ゴジラが来て世界は滅びました。」
そして、上書き保存して閉じます。
(普通のソフトなら、もう元には戻れません…)
2. 復活の呪文を唱える
焦らず、黒い画面でこう打ち込みます。
“`bash git restore . “`
(※古いGitの場合は `git checkout .` ですが、今は `restore` が主流です)
3. 確認する
`story.txt` をもう一度開いてみてください。
……どうですか?
「昔々、あるところに」 に戻っていますよね!?
これがエンジニアがGitを手放せない理由です。
どんなに失敗しても、`commit` さえしていれば、コマンド一行で「無傷だったあの頃」に帰れるのです。
補足:世界へ飛び立つ `push`
最後に、第2回で登場した「GitHub(共有倉庫)」への送信について。
これはGitHubのアカウント作成が必要なので、コマンドだけ紹介します。
いつかチーム開発をする時、このコマンドを思い出してください。
“`bash
1. GitHubの住所(URL)を登録する
git remote add origin https://github.com/あなた/my_project.git
2. 荷物をトラックに乗せて発射する(プッシュ)
git push -u origin main “`
これを実行すると、あなたのパソコンにあった「物語の歴史」が、インターネット上のGitHubへ転送されます。
これでパソコンが水没しても安心です。
全3回のまとめ:あなたは「管理者」になった
長い連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。
- 第1回: 概念を知り(Gitはやり直しが効く魔法)
- 第2回: 仕組みを知り(addで選び、commitで記録)
- 第3回: 実際に導入しました(initして、restoreで復活)
今のあなたは、もう「ファイルを壊すのが怖い初心者」ではありません。
「壊しても直せる管理者」です。
これからAIを使ってプログラミングをする時、こう指示してみてください。
「大きな変更をする前に、コミットさせて」 と。
その一言が、あなたを最強の開発者にします。
それでは、良い旅を! Happy Hacking!
よく使うGitコマンド早見表
最後に、今後の実務で役立つコマンドをまとめておきます。
| コマンド | 説明 | 使用タイミング | |:—|:—|:—| | `git init` | 新しいリポジトリを作成 | プロジェクト開始時 | | `git add .` | 全ての変更をステージング | コミット前 | | `git commit -m “メッセージ”` | 変更を歴史に記録 | 作業の区切り | | `git status` | 現在の状態を確認 | 迷ったとき | | `git log` | 歴史(コミット履歴)を見る | 過去を振り返るとき | | `git restore .` | 最後のコミットに戻す | 失敗したとき | | `git push` | GitHubへアップロード | バックアップ/共有時 | | `git pull` | GitHubから最新を取得 | チーム開発時 |
この記事は「脱・初心者!Git入門」シリーズの最終回です。
- [第1回:まだ「ファイル名_最終.txt」で消耗してるの? マイクラとAIで理解する「Git」の正体](./git-tutorial-part-1.md)
- [第2回:PCなしでも分かる!世界一わかりやすい「Gitの地図」と「知ったかぶり用語集」](./git-tutorial-part-2.md)
- 第3回:さあ、過去を支配しよう。黒い画面で刻む「最初の歴史」(本記事)
全3回、お疲れ様でした!これであなたもGitマスターです!
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