【脱・初心者!Git入門】第2回:PCなしでも分かる!世界一わかりやすい「Gitの地図」と「知ったかぶり用語集」
ようこそ、第2回へ!
前回のおさらい
前回の第1回では、こんなことを学びました:
- 「ファイル名_最終.txt」地獄からの脱却 – Gitはファイル管理の救世主
- Git = タイムマシン(あなたのPC内で過去に戻れる)
- GitHub = 共有倉庫(ネット上でバックアップ&共有)
- AI時代だからこそGitが必須 – AIは爆速で破壊もするから
今回は、その「タイムマシン」の中身を覗いてみましょう。
「実際にGitを使う時、画面の向こうで何が起きているのか?」という「仕組みの地図」を、読み物として解説します。
「今はパソコンを開く気分じゃない」 「スマホで寝転がりながら概要だけ知りたい」
全く問題ありません!
むしろ、いきなりコマンドを覚えるより、「Gitを使う人の頭の中(メンタルモデル)」を先に理解している人の方が、後で実際に触った時の習得スピードが段違いに早いです。
今回は少し長いですが、絶対に誰も置いていきません。
読み終わる頃には、「へぇ、エンジニアって頭の中でそんなこと考えてたんだ」とニヤリとできるようになります。
1. Gitの「セーブ」は普通のセーブと何が違う?
皆さんが普段使っているWordやExcelの「上書き保存(Ctrl+S)」と、Gitの「保存(コミット)」には、決定的な違いがあります。
それは、「選んで、シャッターを切る」という2段階の手順があることです。
これを理解するために、今回は「プロの写真撮影(一眼レフ)」で例えてみましょう。
(マイクラなどのゲームでは「セーブボタン一発」ですが、Gitはプロ用ツールなので、もっと繊細な手順が必要なのです!)
普通の保存(Wordなど)
- ボタンを押すと、今の状態が全部まとめて保存される。
- 「このページの修正は保存したいけど、あのページの落書きは保存したくない」という選り好みはできません。
Gitの保存(2ステップ方式)
Gitは、あえて手順を分けています。
- 【ステップ1】フレームに収める(Add / アッド)
「このファイルと、このファイルだけ写真に撮ろう」と、ファインダーを覗いて構図を決めます。余計なゴミ(保存したくないファイル)はフレームから外します。
- 【ステップ2】シャッターを切る(Commit / コミット)
「パシャッ!」と撮影し、フィルム(歴史)に残します。この時、「運動会の写真」のようにタイトル(メッセージ)を添えます。
なぜこんな面倒なことを?
「Aという新機能」と「Bというバグ修正」を同時に作業している時に、別々の写真として残したいからです。そうすれば、後で「Aだけなかったことにしたい」と思った時に、Bを巻き込まずに済むからです。
2. データが流れる「4つのエリア」
さて、ここからが本番です。
データがあなたの手元からインターネット(GitHub)へ届くまでに通る「4つのエリア」を覚えましょう。
これが「Gitの地図」です。
エリア1:ワークツリー(撮影スタジオ)
- あなたの作業場所です。
- ここでコードを書いたり、ファイルを修正したりします。
- まだカメラを構えていないので、散らかっていても記録には残りません。
エリア2:ステージング(ファインダー / フレーム)
- 「次はここを記録するぞ」と決めたものを置く場所です。
- スタジオにあるものの中から、保存したいファイルだけを選んでここに登録します。
- Git特有の場所です。「選ぶ」という工程がここに入ります。
エリア3:ローカルリポジトリ(アルバム / SDカード)
- 「撮影した写真が保管される場所」です。
- ステージングにあった内容が、ここで正式に「歴史」として刻まれます。
- ここが「タイムマシンのセーブポイント」です。ここまで来れば、いつでも過去に戻れます。
- (ただし、まだあなたの家(PC)の中にしかありません)
エリア4:リモートリポジトリ(Instagram / GitHub)
- 「インターネット上の公開場所」です。
- アルバムの写真を、世界中の人が見られる(またはバックアップとして保管する)場所にアップロードします。
3. データを運ぶ「3つの魔法(コマンド)」
地図がわかったら、次は「エリアからエリアへ荷物を運ぶ魔法」です。
この3つさえ覚えれば、Gitの9割は理解したも同然です。
“` [イメージ図] スタジオ(Work) ➡ フレーム(Stage) ➡ アルバム(Local) ➡ インスタ(Remote) “`
git add (アッド)
- 移動: スタジオ ➡ フレーム(ステージング)
- 意味: 「被写体を選ぶ」
- イメージ: 「よし、このファイルとこの変更を、次のセーブに含めるぞ!」と宣言する行為。書きかけのメモなどはaddしなければ、セーブに含まれません。
git commit (コミット)
- 移動: フレーム ➡ アルバム(ローカルリポジトリ)
- 意味: 「記録する(シャッターを切る)」
- 超重要: ここで必ず「メッセージ(何をしたか)」を書きます。
- 例:「主人公の装備を変更した」「バグを修正した」
- これが「歴史の目次」になります。
git push (プッシュ)
- 移動: アルバム ➡ GitHub(リモートリポジトリ)
- 意味: 「送信する(投稿する)」
- イメージ: 自分のPCにある歴史データを、ネット上の倉庫に転送します。これでPCが壊れても安心です。
ここまでのまとめ:基本の流れ
>
– 作業する(スタジオで準備)
– add でフレームに収める(選ぶ)
– commit でシャッターを切る(セーブ)
– push でネットに送る(アップロード)
4. GitHubならではの重要用語「プルリク」
さて、無事にGitHub(ネット)までデータが届きました。
ここで、現場で一番よく使われる「Pull Request(プルリクエスト)」、通称「プルリク(PR)」について説明します。
これは、チームで開発する時の「非常に丁寧なお願い」のことです。
いきなり書き換えるのはマナー違反
例えば、あなたが「みんなで作っている辞書」の編集メンバーだとします。
「この解説、間違ってるから書き換えとこ!」といって、勝手に書き換えて保存したらどうなるでしょうか?
もしその修正が間違っていたら、辞書全体が台無しになります。
そこで「プルリク」を使う
直接書き換えるのではなく、こうします。
- 自分の手元(ブランチ)で修正する。
- 「ねえリーダー! 修正してみたんだけど、僕の変更を取り込んで(Pull)くれませんか(Request)?」と通知を送る。
- リーダーが内容を確認し、「OK、いい修正だね」と承認して初めて、本番の辞書に反映(マージ)される。
この「確認してから合体させる」という慎重なフローこそが、GitHubを使う最大の理由の一つです。
5. 絶対に覚えておくべき「頻出用語」ランキング
最後に、「これを知っているだけで会話についていける」用語集です。
重要度順(S〜Bランク)に分けました。
ランクS:最重要・日常的に使う用語
| 用語 | 読み方 | 意味 | わかりやすいイメージ | |:—|:—|:—|:—| | Repository | リポジトリ | 「プロジェクトの保管場所」 | Gitで管理されているフォルダそのもの。「宝箱」や「アルバム」全体のこと。 | | Commit | コミット | 「記録する」 | シャッターを切ること。「この変更コミットした?」=「ちゃんとセーブした?」 | | Branch | ブランチ | 「枝分かれ / 並行世界」 | 本流(メインの物語)から分岐して、ifストーリーを作ること。「ブランチを切る」=「作業用のコピー世界を作る」 | | Merge | マージ | 「統合する」 | 分岐した世界を一つに戻すこと。「ブランチをマージする」=「実験用の修正を本番に反映させる」 |
ランクA:GitHubを使う時の用語
| 用語 | 読み方 | 意味 | わかりやすいイメージ | |:—|:—|:—|:—| | Push | プッシュ | 「送信 / アップロード」 | PCからネットへ。自分のアルバムを投稿すること。 | | Pull | プル | 「受信 / ダウンロード」 | ネットからPCへ。最新の変更を引っ張ってくること。チーム開発では朝一番の挨拶代わり。 | | Clone | クローン | 「複製」 | GitHubにあるプロジェクトを、最初に自分のPCに丸ごとコピーしてくること。「ダウンロード」の強化版。 |
ランクB:時々出てくる用語
| 用語 | 読み方 | 意味 | わかりやすいイメージ | |:—|:—|:—|:—| | Conflict | コンフリクト | 「衝突」 | 「同じファイルの同じ行」を、二人が同時に修正してしまい、Gitが「どっちが正しいの!?」と判断できなくなること。開発現場では「コンフリクトした」と表現される。 |
6. なぜ、AI時代にこの知識が必要なの?
「ChatGPTがコードを書いてくれるから、Gitなんて要らないでしょ?」
そう思うかもしれません。でも、実は逆です。
AIは「爆速でコードを書く」けど、「爆速で破壊もする」からです。
AIに指示を出して、うっかり動いていた機能を壊してしまった時。
Gitの仕組みを知っていれば、「あ、コミットしてあるから大丈夫。restore(復元)しよう」と一瞬で解決できます。
Gitは、AIという「暴走しがちな天才」を乗りこなすための命綱なのです。
7. 次回の予告
お疲れ様でした!
少し長かったですが、これであなたの頭の中には「Gitの地図」が完成しました。
- スタジオ ➡ add ➡ commit ➡ push ➡ GitHub
この呪文のような流れの意味が、今はなんとなくイメージできているはずです。
さて、次回はいよいよ最終回。
【第3回】実践!実際にコマンドを打って「神」になる
今回学んだ地図を片手に、実際にパソコンでコマンドを打ってみます。
黒い画面に `git add` と打ち込み、歴史が刻まれる瞬間を体験しましょう。
手元にPCがない方も、読むだけで「ハッカー気分」が味わえるように書きますので、ぜひ最後までお付き合いください!
この記事は「脱・初心者!Git入門」シリーズの第2回です。
- [第1回:まだ「ファイル名_最終.txt」で消耗してるの? マイクラとAIで理解する「Git」の正体](./git-tutorial-part-1.md)
- 第2回:PCなしでも分かる!世界一わかりやすい「Gitの地図」と「知ったかぶり用語集」(本記事)
- [第3回:さあ、過去を支配しよう。黒い画面で刻む「最初の歴史」](./git-tutorial-part-3.md)
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